美容師になるには『社会人編』

美容師を目指す方の中には、今現在学生の方もいらっしゃるでしょうし、社会人として働いている方もいらっしゃることでしょう。

もしかしたら、専業主婦の方もいらっしゃいますよね

美容師法によると「美容師免許取得」について、年齢による制限は18歳以上であると明記されているだけで、上限の年齢は定められていません。

ですので少数派ではありますが、美容学校のクラスの中に一定数は「社会人」から受験した美容学生ということも珍しくないのです。

この記事では、「社会人」のあなたが美容師になるために必要な情報と、実際に直面するであろう困難についてご説明していきたいと思っています。

お時間がありましたら、ご一読ください。

「社会人」が美容師を目指すにあたって、心配なこと

まず美容師になるためには、厚生労働大臣の認可を受けた「美容学校」を卒業せねばならないのですが、美容学校に入学する学生のうち約8割から9割は高校生からのストレート入学する学生たちです。

多勢とは異なり、もしあなたが社会人から美容学校へ入学された方だとしたら、残念ですが入学直後から「マイノリティ」な存在になってしまうことは避けられないでしょう。

しかし高校卒業直後とはいえ、周囲も18歳を過ぎた「立派な成人」なので、きっとあなたが思っているほどの疎外感を感じることは無いでしょうし、すぐに溶け込めるのでご安心ください。

ただ注意すべきは、自分から壁を作ってしまうと、「突破」してくるようなガッツある人物はいないので、壁を作ることよりも先に、ご自身の「取説」をイタクないように注意を払い、公開したほうがいいかもしれませんね。

このように年齢が離れているからこそ、入学前に抱える心配事が多いと思われますが、大前提として美容師を目指す人自体が「変わり者」であることが多いので、取り越し苦労に気づくのも時間の問題といえそうですね。

また学費は通信や昼間、夜間など「課程」によって大きく異なるので、もしご自身が社会人時代に貯めたお金で通学されるのでしたら、無理して費用のかかる「課程」を選択しないほうが良いと先にアドバイスをしておきます。

なぜなら美容師という職業は、就職してからしばらくの間はホントに「薄給」で有名な職業ですが、もし入学前に少しでも貯金を持っているのなら「アシスタントの時期」にこそ取り崩すのがベターな選択といえそうです。

アシスタントで辞めていく美容師の要因の一つに挙げられることも多いのですが、「給料が安い」ことはドロップアウトしていく原因のトップ3であると言われています。

ですので、少しでも貯金に余裕があるなら、例え薄給が辛くても「もう少し頑張ろう!」と思うこともできるので、繰り返しますが「お守り」代わりとして「貯金」を大切にされることをお勧めいたします。

美容師国家試験は「難しい?」

社会人を経験されて美容師を目指す方々だけのことではないのですが、たとえば「勉強」はやはり若い頃の方が「吸収と定着」が良く、加齢とともに吸収の面からも悪くなることは一般的に知られています。

よく聞く話では、社会人から美容学校へ入学される方の中には「主婦」をされていて、子育ての落ち着きと共に「美容師」を目指す方もいらっしゃいますし、この「勉強」に対しておよび腰な人も現実問題としていらっしゃるのではないでしょうか。

美容師免許を得るためには「美容師国家試験」に合格しなくてはなりませんが、試験内容は大きく分けて「学科8科目」、「実技2課題」で構成されています。

このうちの「学科」が50問中60%の正答率で合格、「実技」が40点以内での減点で合格となります。

ここまでの説明のかぎりではとても難しく聞こえてしまいますが、実際は想像しているよりも簡単ですし、美容学校の定期テスト、及び卒業試験が受かるようなら「余裕」といえるのではないでしょうか。

学科の勉強内容も、中学・高校で聞き馴染みのあるものも多くありますし、美容に興味があるなら聞き馴染みのある言葉もあったりもするので、そんなに食わず嫌いにならなくていいでしょう。

しかし、「各部名称」のように単語を数多く覚えねばならない科目もあるので、吸収力が衰えてきた方には少々キツイかもしれません。

いずれにせよ「美容師国家試験」は代々最も簡単な「国家資格」と揶揄されることもあるので、あまり肩に力を入れずに励んでくださいませ。

実際、社会人だけど美容師になれるの?

社会人といっても定義の範囲は広いので、万人に当てはまるわけではないですが、先ほども申し上げたとおり「美容師法」によるところの、美容学校入学については「上限の年齢制限」がないので、もちろん美容師を目指すこと自体はいつでも可能です。

美容師になれるのはいいけれど、実際に入学後にどれだけ、どんなことをしなくてはならないのか?その点について掘り下げて参ります。

もしあなたが現在一般的な会社員だった場合、美容師に目指すために一番大変なこととは何でしょうか?

美容学校に入学するための「受験勉強」や「学費の工面」、「現在の仕事の責任」など思いつくだけでも多くの問題点に立ち向かわなければならないのですが、最もあなたが直面する困難の中において、多くの時間を割かなければならないのが、家族を含め「周囲への理解」といえるでしょう。

というのも、現在社会人であるあなたには「社会人としての責任」を背負っているはずですし、「美容師になりたい!」と周囲に宣言したら、一般常識の尺度で測った「社会の目」でジロジロとみられることもあるでしょう。

もちろん現在の会社に「美容師になること」を知られることなく退社できれば何も気にすることはないのですが、一般的には上司から「辞める理由」を聞かれるでしょうし、場合によっては引き留めにあうかもしれません。

そんなとき、自分の考えをしっかり伝えられるかがとても重要ですし、たとえ会社でなかったとしても、「家族」の説得の際にも求められることは、あなたの「熱意」そのものなのです。

それもそのはずなのですが、せっかく就職して社会人としての一歩を歩み始めたばかりなのに、我が子が会社を辞めて美容師になることは多くの親たちが反対することでしょう。

残念ですが一般的には「手に職」の道は、若い頃より歩み始めるべき!と「思い込み」を抱いている人が社会には多く、途中から業界に入るあなたの行動は茶々を入れられることもあることでしょう。

「私がやりたいからやる!」

これを周囲に対してどれだけ根気よく説得できるかが、この困難を打開する唯一の方法といえるでしょう。

理屈ではなく「パッション」を人へ伝えることは、美容師として、またスタイリスト以降も大いに必要なスキルとなりますし、業界としてもパッションのある方に「美容師への道」を歩んでいってほしいと切に願っております。

美容学生と「年齢差」

先ほども触れましたが、美容学校へ入学してくる学生の大半は高校卒業からのストレート組なので、「あなたのよう」にそれ以外の環境から入学してくる時点で全体から見ると、あなたはマイノリティだということを入学前までに認識しておいたほうが良さそうです。

というのも入学後すぐに、なんとなく年齢については情報の共有として集団認識するので、今後どんな「キャラ」をどう作りあげるか、あなたは事前に準備せねばなりません。

これにはご自身の性格的などもあるので、どうすればいいとベターなアドバイスはできないのですが、大きく分けて「姉御肌」でいくのか「同列」で関係を築くいていくのかを、クラスという集団から問われるはずです。

どちらのキャラを選んだにせよメリットとデメリットがありますが、個人的には高校卒業者の18歳から年齢差が3歳未満であるなら、「同列」の関係を築いて学校生活を存分に楽しまれたほうが、楽しいのかもしれません。

どうしても「姉御」にキャラを作ってしまうと、盛り上がっているときに一緒に弾けきれないところがあったり、「落ちこぼれ」になることを許されない特徴を持ってしまう恐れもあります。

こう話していると、「社会人経験組」はちょっと窮屈に感じてしまうかもしれませんが「キャラ」を認知させるまでの辛抱なので、在学中2年間の学生生活を左右すると思って面倒くさがらず、精進なさってください。

社会人経験ある、「美容学生」の就職事情

美容学生の多くは、学校卒業と同時にヘアサロンに就職することが一般的ですが、社会人を経て美容学生になった方々には、就職事情については「気になること」かもしれませんね。

一般論になってしまいますが、例えば「サロン就職」についていうと、サロン目線で見た場合は「20歳で卒業」した美容学生と、「20代半ば」までの美容学校卒業生では、さほど違いがないと捉えられていて、本人が気にしているよりも採用結果には影響しないといえそうです。

さらに既に上述していますが、あくまでもサロン側から見たカテゴライズされた感覚としては、20歳から20歳半ばまでであって、どうしても20代後半や30歳を超えてくると、就職先サロンは「買い手市場」と言えなくもありません。

なぜなら、美容業界では美容学校を卒業しただけでは、即戦力としてお客様を担当することは不可能であって、平均でも数年はアシスタントとして実戦用の技術を習得せねばなりません。

そうなるとサロンに就職してから数年後、すなわちスタイリストに昇格する頃には30歳になる美容学生を採用してしまうと、サロン側のリスク管理として考えると消極的になってしまうのも致し方ない現実ということです。

現在の結婚適齢期は25歳から34歳が最も多いといわれていて、先ほどご説明した通り、30歳にスタイリストを迎える美容師には、どストライクな「ウリ時」ということです。

この場面でサロン側に立って申せば、採用後のアシスタント時代はいわゆる「投資」の時期となっており、スタイリストとしてお客様を担当してやっと「回収期」というのがサロン経営の実情です。

ですので回収期にしっかり「回収」しなくては、会社として赤字となってしまいますし、スタイリストになってから5年間は美容師として、多くの経験値を積む時期なので、あえてその期間に当てはまる美容学生を、積極的に採用しないというのが実情ではないでしょうか。

20代後半から30歳以上の方で美容師を志す方には、残酷な言い方になってしまいますが、ご自身が就職を希望するサロンに、いわゆる「有名店」を希望することは難しいと言わざるを得ません。

有名店の就職は難しいのですが、もちろん美容師として働くことは十分に可能ですし、美容学生のうちに将来計画や生活を重視した、「就職活動」を考えることが大切だということをアドバイスとさせていただきます。

ちなみにサロンの「福利厚生」や「働き方」については、原宿や表参道のサロンよりも地域密着の郊外タイプのサロンのほうが充実している傾向があるので、そちらもぜひ就職先の判断材料として考えてみてもいいかもしれません。

社会人美容師の「強み」

このように異業種で社会人を経験してから成った美容師は、就職については他のストレート組に比べると不利になることもありますが、逆に「強み」となるところもあなたは持ち合わせているのでご安心ください。

というのも、美容学生の最終ゴールは「就職」でもなければ「スタイリスト」になることでもありません。

結論から言えば、多くのお客様から美容師として「支持」をいただくことが全てと言っても過言ではないでしょうし、実際に社会人として生きていくには「稼ぐ」ことが重要となってくるのです。

そしてその「お客様からの支持」をいただくためには、技術はもちろんですが「接客」も重要ですし、お客様から指名予約をいただくためには重要な要素となることは間違いありません。

そして、その「接客」を通しての「顧客満足度」を上げてくれるアイテムが「共感力」です。

サロンワークにおける「共感力」とは、お客様の側に寄り添うことであって、信頼を得るための1番の近道だと昔から言われていますし、「共感した間柄」としてはちょっとやそっとでは信頼が崩れることはありません。

ですので、社会人を経験して成った美容師さんには、社会経験からくる「共感力」こそが最大の武器であって、「指名率」の良さでは群を抜くことも十分可能といえるでしょう。

美容師になるには 社会人編のまとめ

「社会人から目指す美容師!」について、詳しくご説明して参りましたがいかがだったでしょうか?

多くの方はご自身がマイノリティな存在となるのが、「不安」でしょうし、なるべくそれを避けようとするものです。

しかし文中にも書きましたが、「社会人経験」があることは大きな強みとなりますし、みんなと違うことをよく言うと、「個性」や「オリジナルティ」と表現することもできます。

そして、その個性やオリジナルティの相性によって、お客様は次回からあなたを「指名」するかどうかの判断していると言われていますし、「なんとなく心地いい」と思わせるのも、美容師の魅力として語られることも大いにあります。

たとえばお客様が担当美容師を決める場合、「なんとなく雰囲気が、自分と合ってる」というのがアンケートの一番上位となっており、詰まるところ「なんとなく合っている」と感じさせるには、美容師とお客様の間に「共通項」があるときに発生させるといわれています。

ちなみにこの「共通項」とは、価値観というよりは「経験」や「環境」が大きく影響してきますし、さらには親近感すら与えることもできるため、接客サービス業においては狙ってやるには難しい「高等スキル」となっています。

そして「社会人経験」を持つあなたは、数の多いマジョリティな美容師に比べても、「共通項」を持ち合わせていることが多く、「有利」にスタイリスト以降のサロン内競争に臨めるはずです。

どんなことでも、意志の強い者が「頭ひとつ抜きにでる」ことは知られていることですし、社会人を経て「やっぱり、美容師になりたい!」と行動したあなたの覚悟は大したものです。

最後に、もしあなたが現在「社会人」だったとして、今まさに「美容師」への道を進まんとしているのなら、きっとこう後押しをしたいと思います。

「やってみればいいじゃん!」

考えるより行動するほうが、「美容師」らしいよ!