美容師になるには、『美容学生編』

4月、美容師を夢見て挑戦する多くの方々が入学する「美容学校」ですが、美容師になるためには、美容師法で定められている通り「美容学校の卒業」が絶対条件であるため、美容師の卵達にとっては必ず通る「登竜門」となっています。

ちなみに美容学校とは、つまり「専門学校」のことをいいますが、なぜか他の業種の専門学校とは異なり、専門学校とは言わず「美容学校」と呼びたがる文化がそこにはあります。

同じような文化としては、「看護学校」などもそうですが、専門学生という意識が本人たちにはあまり無いことが特徴的で、なにか独特な価値観を持った人たちの集合体であることには間違いないようです。

この記事では、美容師になるために必ず通う「美容学校」にフォーカスして、詳しく掘り下げてみようと思います。

ただし、学校ガイダンスにあるような体裁を気にした内容では無く、美容学生の間で言われている「美容学生あるある」について掘り下げてお話しして参ります。

どうぞご興味ある方はご一読ください。

入学式の服装が「普通ではない?」

全国各地の学校で入学式が行われる4月ですが、美容学校もまた多くの新入生を集めて毎年入学式を執り行います。

入学式を行うこと自体は美容学校も大学も専門学校、さらに短大もすべて同じようなものですが、一つだけ美容学校ならではの他と異なる点に注目されることでしょう。

それはズバリ正装のはずの「スーツ姿」が普通じゃないことだと言い切れます!

例えば、素材が珍しいもので織ってあるスーツであったり、ネクタイが「蝶ネクタイ」の人も珍しくはありませんし、地味な色を着用しているほうが少数派ということもよくある光景です。

服装だけとっても一般的な入学式とは異なり、入学式というよりは「コンテスト」のような自己主張の晴れ舞台となっているところも否めません。

ただし、美容学校の校風によっても異なるので、ご自身の進学する美容学校を事前にリサーチしてから「服装」を選ばれてもいいかもしれません。

このように美容師の卵たちは一癖も二癖もある人物であることはご理解いただけたと思いますが、番外編として「保護者」もまたちょっと珍しい格好をしていることも少なくありません。

というのも、美容師の親は美容師であることはよくあるのことなのですが、数十年前の入学式に変わった服装で参加していたのも、まさに彼ら・彼女たちです。

普通でないことは想像に難しくないですよね。

美容学生の「住」事情

「住生活」についても学生一人一人によって様々ですが、ここでは「一人暮らし」を選択した学生をモデルをもとにお話しして参ります。

たとえば一部のボン◯ンな一人暮らしは例外として、多くの美容学生の一人暮らしはハッキリいって「貧乏」であることが多いのが現実です。

物件でいうとユニットバスのワンルーム、または1Kであることが多く、たまに風呂トイレ別にこだわる学生がいたりするのですが、結果として立地や日当たりなど、何かを妥協することになるでしょう。

それでも女性ですと、両親が心配して「オートロック限定」で部屋を探されていたり、大前提として「女性専用の学生寮」に住むことも多いのではないでしょうか。

ただ全体的にいえるのが、おしゃれを追求したお部屋に住む学生は実は少なく、実用的な無難な感じのお部屋に住んでいることが多いでしょう。

といいますのも、初めての一人暮らしでは資金を握る親の発言権のほうが強いので、買い揃える家電や設備も「普通に安いやつ」が採用されていくからだといえますね。

一般的に美容学生の部屋は「おしゃれに違いない!」と思われがちですが、現実の「美容学生の部屋」は、美容師就職後に自分の稼ぎでコツコツカスタムされるはずですので、「普通」か「物が少ない」かのどちらかが特徴的のようです。

ちょっとおまけとしてお話しすると、多くの美容学生の部屋には「スチールラック」が設置してあることが多いのですが、ほぼ全ての自宅ではこのスチールラックを占領しているのは、間違いなく「無数のウィッグ」たちではないでしょうか。

ウィッグとはいわゆる髪の生えた頭部だけの人形ですが、入学当初は夜中トイレに行くたびに「ビクッ!」としてしまいますが、一週間もすれば「置き物」として認知されていくので、なんの心配もありません。

ただ地元の友達や、彼氏彼女が遊びに来た時は、お決まりのように「震えている😱」のでケアは必要となるでしょう。

荷物が異常に多い、重い。

美容学生を街で見かけた方はすでに知っているかと思いますが、美容学生のバックはとにかく「でかい!」し、重い。

男性なら背負っても大きすぎるキャンプバッグぐらいの大きさなのですが、小柄な女性ですと背中より大きなバッグになってしまうので、なんとも言えないバックに背負われている光景となってしまうのです。

でかい!だけでなく、重い・・のです。

このでかいバックの中身に何が入っているかというと、美容学生の日常的な荷物として定番なのが、

・WD用、AW用のウィッグ各一点
・カット用のウィッグ
・クランプ
・ロッドケース
・白タオル大量
・シザーケース
・座学授業の教科書・筆記具
・その他諸々の細かい物

上記リストを見て「美容師」ならイメージが湧くのですが、なかなかに色々入ってますし、サッカーボール4つ持ったぐらいの体積といえば伝わるでしょうか?

とにかくデカくて重い、黒いバッグなのです。

それを電車通学の学生は満員電車の中でもめげず、周囲に迷惑な大荷物が何処に行かぬようにしっかり抱えて死守せねばなりません。

たまに見かける悲惨な光景としては、荷物だけが人並みに飲まれて「どんぶらこっこ」してしまい、ドアから降車していかんばかりの勢いで流されてしまうことも、美容学生のあるあるといえそうですね。

どれだけ時代が移ろいでも、きっと美容学生の「でかいバッグ」だけは変わることはないでしょうし、日々背筋が鍛えられていたことを、入学後の最初の夏の海で友人から「立派な背中だね!」と指摘されるまでは気付くことはないでしょう。

ウィッグを溺愛する

美容学生にとって「ウィッグ」とは毎日持ち歩いて毎日シャンプーして、さながら幼い我が子をお世話するぐらいに手をかけている人も少なくないですよね。

なかには「〇〇ちゃん♡」や「〇〇くん」などのようにウィッグに名前をつける人も

一定数いますよね。

そしてなぜか、欧米系の外人名が用いられることが多いようで、カタカナの名が教室中に飛び交うことも「あるある」ではないでしょうか。

美容学生が日常的に使用するウィッグには種類があって、練習する施術によって使い分けることが一般的ですが、その種類を少し見てみましょう。

・ワインディング練習用のウィッグ
・カット練習用のウィッグ
・オールウェイブ練習用のウィッグ

基本的には上記3つのウィッグを使い回すのですが、ワインディング練習用のウィッグとオールウェイブ練習用のウィッグは、「美容師国家試験実技」まで使用するので、使い捨てというわけではなく、末長く2年間相棒として活躍するわけです。

練習の後はウィッグのシャンプーをして管理するのですが、人間の頭髪と同じように「ウィッグの毛」もやはりトリートメントが効いていると扱いやすくなります。

「今日は特別にトリートメント〇分漬け!」

なんて言いながら、ウィッグのお世話を毎日するのです。

入学後しばらくすると、相棒2体のウィッグを「溺愛」していることにあなたは気づくでしょうし、ちょっと前まで「相棒」を気持ち悪がっていたことに、自己嫌悪になるかもしれません。

そんな調子なので、美容師国家試験が終わって美容学校卒業間近になると、これまでの相棒とのお別れに悲しくロスを味わうことでしょう。

ただし一般的には、サロン就職後もウィッグたちは現役を続けていくことが大半です。

もしかしたら、あなたの努力を一番よく知っているのは身近な「相棒」なのかもしれませんね

愛着があるので、実はワインディングウィッグだけ実家に置いてあるという美容師も多いと聞きますし、現実問題としてなかなか捨てられないのでしょうね。

見たことのない「ハイセンス」に見惚れる🤩

美容学生といえば、「おしゃれ」や「カラフルな頭」、「洋服好き」などファッションに対するイメージが印象深いのですが、実際の美容学生のファッション事情はどうなのでしょうか?

ファッションといっても、テイストは様々あって「マニッシュ」なものから「ゴスロリ」のような振り幅の大きいカテゴリ分けもありますし、「フェミニン」と「エレガント」のように一見するとクロスオーバーした部分の多いテイストもあるのです。

言うならば、美容学生の人数が多ければ多いほど学校内には様々な価値観を持った個性的なファッションに出会うでしょうし、なかには「???」といった、どういう構造かさえわからないような「ハイセンス」な洋服を自慢げに来ている人も多くいらっしゃるので、バラエティの豊かさでは楽しいことでしょう。

ただ美容学生の大半はいわゆる「貧乏」なので、ハイセンスといえど高級な洋服というより斬新な発想からインスパイアされた、一つの作品のような「いでたち」となるのです。

ファッションに関してさらに言えば、美容学生の期間は好きなファッションを全開で楽しめるのですが、卒業後サロンへ就職してしまうと一部の尖ったセンスのサロン以外は「普通っぽい」サロンのほうが多いので、在学中に個性的すぎる服装の謳歌は終わらせなければなりません。

巷の噂では、尖りすぎたセンスゆえ「就職」ができなかったということも聞きますので、美容師といえどなんでも自由という感覚を少し変え、接客サービス業であることを忘れないようにしたいものです。

地元の友達の髪を切って失敗する

続いて、美容学生であるがゆえの失敗についてご紹介いたしますが、美容学生「あるあるランキング」で上位にランクインするのはこちら。

ずばり「地元の友達の髪を切って失敗する」ですね。

上京組も実家組もいわゆる「地元」というものは誰しも持っているものですが、久々に会った地元の友達に「髪切って!」とお願いされることは定番中の定番です。

ここで切られる側、切る側双方に注意をしておきたいのは、美容学生は「まだ人の髪は切れません!」ということです。

ただし、カットセンスのある学生で1年生の後半ぐらいなら髪を切ることも可能かもしれないので、多少個人差があると言っていいでしょう。

というのも美容学校に入学して、授業でいきなりヘアスタイルの切り方を覚えることはなく、基本的なシザーの持ち方からブロッキング、さらにスライスの取り方と同時にシェイプの重要性を基礎として、先ずは学ぶはずです。

ですので、春に入学して秋口頃までは全頭を通してスタイルを作り上げられる髪型は限られており、パッツンボブもしくは、かなりクラシカルな「誰がするん?」といえるようなスタイルとなることでしょう。

そんなこともあり、ヘアカタログに載っっているようなヘアスタイルを作り上げることは、とても困難であると言わざるをえません。

・・が、しかし

大抵の場合、地元のご友人は「OK!平気平気!」と言うことでしょうし、切る側の本人もその気になってしまいますが、もちろんカットするときは「勘」だよりの「作品」となることだけご注意くださいませ。

感覚的に言えば、「なんとなく切ったら、なんとなくできた!」と思える程度の完成度がホントのところではないでしょうか。

さらにいうと、美容学生のシザーは「ウィッグ用」のものなので、人の髪を切るにはシザーとしては性能が不足することでしょう。

なぜならシザー性能の不足を意味するものは、いわゆる「切れ味」です。

「切れ味」とはつまり、カットした髪の毛の断面が「キレイ」か否かの結果を残酷なまでに生み出してしまいます。

わかりやすく言うと、切れ味の悪いシザーで髪の毛を切ると、結果的に「枝毛」ができやすくなってしまいます。

カットした断面が「潰れて」引きちぎられたような格好になってしまうので、当然キューティクルが裂けてめくれ上がります。

ご経験がある方もいらっしゃるかもしれませんが、毛先に白いツブツブを発見したことはありませんか?

あれこそ正に、切れないシザーで切った結果といえます。

話を戻しますが、夏休みを迎える頃の美容学生によるカットの失敗は、毎年各地で発生するのですが、個人的には「グラボブ」と「セイムレイヤー」をマスターするまでは、地元の友達からのカット依頼はお断りするのが正解といえますね。

何故だろう?熱い人が多い

美容学生に限らず美容師は基本的に「熱い人」が多いと言われていますが、みなさんの周りはどうでしょうか?

一般的には「おしゃれな人」のイメージを、クールや個性的などと捉える方も多いのですが、これはあくまで一般的なイメージにすぎません。

というのも美容師のサロンで働く環境は、役割分担されたチームで動くことがサロンワークの定石となりますし、チームとして働くには「仲間意識」も必要不可欠となります。

チームでいいモノを作りたいなら、「意欲」が一方向に集中せねば叶いませんが、そうとなると精神的なつながりも求められるので、一丸となって熱くなるのかもしれません。

たとえば美容師と同じように、クリエイティブな仕事を志す人たちにも「熱い人が多い」と言われていますし、彼らに「職を選択した動機」を尋ねると、多くの場合で「誰かが幸せになるモノを、自分がクリエイトしたい」もしくは「したかった」と応えるそうです。

このことからもクリエイティブな仕事をする人たちは、「なんで、熱い人が多いのか?」について感覚的にご理解いただけると思いますし、美容学生もクリエイティブワークの卵としては「持っていて当然」のものかもしれないですね。

美容師になるには、『美容学生編』のまとめ

「業界に入って何年目?」

これは美容師として働いていると他者からわりと聞かれることですが、この時の答え方が人によって違うので、一般的には美容学校入学からが「美容業界一年生」と言ってよいでしょう。

そんな「一年生」が入学した美容学校の1日は、これまでの高校生活などとは異なるもので、全ての時間を費やして「美容師になるための学び」に当てることになります。

そのほとんどは体に覚えさせるための「反復練習」なので、大変かもしれませんが身につけば「一生の財産」となることは言うまでもありません。

新しく見るものや体験するものばかりでしょうし、挫折を味わうことも美容学生時代に多少あるかもしれません。

もしこれから美容学校へ進学を控えている方や、スタイリストになるまで毎晩練習に取り組んでいる若い美容師さんがこの記事を読まれているとしたら、一言お伝えしておきます。

一生懸命に練習しているからこそ、「できないこと」に苛立つときもあるでしょうし、ご自身の実力の乏しさに絶望することもあるはずです。

しかし、美容師とは「技術をもって他者を美しくする者たち」です。

今あなたたちが必死になって習得しようとしているモノは、自分のためのものではありません。

他者に施すためのモノで、美しくなってもらうために技を身につけているのです。

簡単に手に入るモノでもありませんが、

「他者のための向上心」はこれより高みへ行くための「特急券」となり得ることでしょう。